【057】 富  士  山
  今年から4月29日が『昭和の日』となった。 ゴールデンウィークのスタート日だから、  東京全体がスモッグのない青空が期待できた。 
  富士山からここ下町まで約150kmの距離だ。 快晴で風が強く、  空気が澄めば、  下町からでもビルの隙間に、  窮屈そうな富士山が見えることがある。 
  とくに真冬の、  透明感のある早朝とか、  シルエットになる夕暮れ前とかは、  富士山がいい雰囲気で観られる。 
  過去にはタイミングが悪く、  下町から見た富士山の写真が撮れず、  100景にも掲載できなかった。 

  朝10時過ぎだった。 カメラを手にして中川の護岸に出かけてみた。 川辺は春霞のように、  やや透明感がない空気だ。 失望というか、  期待度が下がった。 
  ただ、  スモッグがないので、  西の彼方には小粒な富士山が見えた。 特殊なフィルターがあれば、  遠方にかすむ富士山がしっかり浮かぶ。 それらは持っていなかった。 
  かすむ富士山では締りのない写真になってしまう。 ここはアクセントが必要だ。 日祭日ともなると、  高速モーターボートの往き来が多い。 10分間も待てば、  一隻や二隻はやってくる。 狙い通り、  カメラがボートを捉えた。 
『富士山』という表題をつけてみた。 しかし、  手前の高速モーターボートばかりが目立ち、  富士山の存在は薄い。 富士山は観るにしろ、  撮るにしろ、  やはり真冬がよい。 

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