【080】 青 い 電 車

  最寄り駅の上り線には、 青い電車が静かに入ってきた。 ホームの乗客たちは思わず、 めずらしさに目を見張る。 ことのほかホームが華やかにみえる。 

  乗客たちは時おりの情景だけに、 一度立ち止まり、 『BLUE SKY TRAIN』の車体をじっと見つめる。 青い車体は洒落ている。 なにかしら夢の世界に運んでくれるような気持ちになる。
 

  東京・下町には田舎がないひとが多い。 だから、 青い寝台列車に乗って帰省したとか、 上京してきたとか、 故郷と結びつく話題はほとんどない。 でも、 遠い旅をした記憶は数々ある。 
  遠い旅をさせてくれる、 青い寝台列車。 そこには夢があった。
 

  昭和の半ば頃は東京駅発、 上野発からの遠距離列車となると、 「BLUE TRAIN」が主役だった。 青い列車に乗りたくて、 お金をためて遠距離の旅に出かけた。 

  九州、 北海道、 東北には、 青い寝台列車は一晩かかったものだ。 そこまでの長い距離が苦痛ではなかった。 時間のむだも感じず、 楽しかった。 
 
  目のまえの青い電車が、 出発ベルで動きはじめた。 妙に名残惜しい気持ちになった。
 

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