【021】 町 工 場
 路地は曲がりくねっている。 奥まったところが、 町工場地帯だ。 
 二階建ての一階が工場だ。 奥から旋盤の音がひびく。 職人が油汚れの姿で金属片を削っている。 ダライ粉が、 面白いようにニョロニョロわき出てくる。 

 機械は休まず、 職人の手も生活のために休まず。 旋盤の音は止まらない。 

 どんな製品ができるのだろうか。 それだけでは製品にならず、 正確にはなにかしら組み立て部品だろう。 出来上がりはきっと極小の部品。 職人の腕が競えるミリ単位のものだろう。 

 表通りの鉄箱には廃材が盛りだくさんで詰まれている。 ぷーんと鉄の匂いがする。 油の臭いとも違う。 やはり、 鉄の臭いだ。 これが下町の匂いだ。 

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