【022】 鯉とかもめ
  学校帰りの高校生が、 夕日に顔を染めて橋の欄干から覗き込んでいた。 
 
  澱んだ川のなかには、 一メートル前後の黒っぽい鯉が泳ぐ。 ずいぶん太っている。 3、 40匹はいるだろう。 戯れているように群れている。 鯉の背びれが時おり水面をかすめる。 
  男子学生が手にするパン葛を投げる。 

  巨きな鯉が餌を豪快に奪いあう。 目ざといカモメが啼きながら集団で飛来してきた。 水面ぎりぎり低空飛行する。 高校生の投げた、 パンくずをさっとかすめとった。 むさぼった瞬間には大きく旋回する。 欄干に近づいたカモメが空中で、 パン葛を奪った。 器用なものもいる。 カモメはいつまでも騒ぎ立てる。 

  川面にはおとなしい4羽の鴨が泳いでいる。 控え目な性格なのか、 遠めにみているだけだ。 カモメのまわりにはとても近づけず、 モジモジしている。 気の毒だった。 


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