【026】 送 電 線
  真っ赤に燃えた太陽が沈みかけた。 夕日は消えゆくわが身を嫌うように、 送電線の鉄塔にしがみついた。 夜の気配を察したのだろう、 河川のススキが寝床に入る準備をはじめた。 穂先を並べて枕の用意をしている。

 夕日は鉄塔にも送電線にも嫌われ、 突き放されてしまった。

 陽はやむを得ず下町のビル群の背後に顔を隠した。 地平から消えると、 残照が西の空を焼けつくす。 ビル群が金屏風を背にしてシルエットで浮かぶ。

   うす闇の気配が広がると、 住居の窓から灯火が点きはじめた。 いちばん星を見たあとのように、 窓から次々と明かりが増える。 ここは送電線の腕のみせどころだ。

  しかし、 闇が濃くなると、 鉄塔から鉄塔に渡されたケーブルが段々細く消えていた。 きっと一晩中、 黙々と電気を送り続けるのだろう。

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