【041】 隠 れ ん 坊
  下町っ子は、 隠れん坊が大好きだ。 狭い路地裏にはいくらでも隠れるところがあるからだ。 

  缶を蹴って、 裏道から逃げた。
  4年生の鬼がぼくたちを探している。

  児童公園で、 一人が捕まった。 下手で、ドンくさいからだ。 いつも真っ先につかまっている。

  また、 一人がつかまった。 町工場のパレットの陰だけど、 肥満体だから頭を隠して尻隠さずだ。 つかまっても、 当然だ。

  きのうは屋根裏に隠れた。 家主に怒鳴られたから、 大声で見つかってしまった。 

  きょうは考えてきた。 このスクーターの陰は見つかりそうで、 見つからない。 ブロック塀と道路の植栽が、 都合よく、 ぼくを隠してくれる。 

  鬼の気配で、 さっと向かいの家の陰に逃げきれるところだ。   三人目が捕まった。 ぼくは逃げ切るぞ。
  「もう、 止めた。 家に帰るぞ」

  鬼のあきらめ方が早い。 根性がないな、 五分も経っていないのに。 仕方ないか、 一緒に帰るか。 
「なんだよ。 もう止めるのかよ」
  ぼくはバイクの陰から立ち上がった。 
「見つけた」
「卑怯者」
  児童公園のなかで、 ぼくは鬼を追いかけ回した

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