【065】 交差点の信号待ち
  下町の一角には、 町を串刺しにする大街道がある。  駅前の大きな交差点で、 信号を待つ、 ベビーカーを押す母親たち。  目のまえを大型トラック、 トレーラー、 配達便が行きかう。  汚れた空気を意識してしまう。
  母親はつねにわが子の幸せを願う。  そして、 この子たちに何かを残してあげたい、 と。
「一番のプレゼントは新鮮な空気だけれど?」
  大都会の物流を支えるトラックが数珠つなぎ。  私も享受している身だから、 悪くいえない。  どうすればいいのかしら。
  空気の汚い交差点は通りたくない。  駅前商店街の買物はここを通らないと行けない。  幼い子をひとり家に残せないでしょ。  危なくて。
  交差点で横目を流せば、 地方ナンバーの車の往来も激しい。

「なぜ電車や列車で、 東京に来ないの?」
  そんな思いを持つ。  地方の人は日常の買物でも、 歩かず、 車を使うみたい。  いまは歩く姿こそ美しい時代なのに。
「この子たちの将来の顔を曇らせないで」と心底から訴えたい。
  きれいな空気が取り戻せたらいいな。  下町っ子のベビーのために。  いまは祈るばかり。

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