【066】 朝 の 公 園
  夜が明けると、 児童公園には隣近所の住民たちが清掃用具を持ち寄ってくる。 
  お揃いのウインドブレーカーを着ている。 これだけでも、 住民の心が一つになれるから、 不思議なの。 朝の清掃は地域の奉仕というよりも、 私の心を掃き清めるためにやっているのよ。 
  きょうは地面がことのほか乾いているわ。 吹く風が肌に感じられる。 南風だわ、 だから寒くない。 丁寧に履かないと、 砂埃が立つ。 私は慎重になる。 
  園外の周辺道路にも足を伸ばすの、 いつも。 私有地の道路とか、 公道とかわずわしいことなど考えない。 みんなの生活の道なのだからだ。 心を磨くように隅々まで丁寧に掃くことが、 私の心を納得させる。 

『おはよう』
  通勤する人たちが自転車で、 路地からやってきた。 
「いってらっしゃい」
「お世話さま」
  感謝のことばをもらえると、 一日が明るく感じる。 
  清掃用具を小屋に片付けはじめると、 公園の風景がたちまち変わってくる。 ほら、 来たわよ。 ランドセルを背負った男の児がいつも一番乗り。 遠くから大声で挨拶する児よ。 元気がいいわね。 明るくて、 とてもいい。 

  公園が集団登校の集合場所。 あちらの路地から、 かわいい姉妹がやってきた。 ふたりとも、 きれいに髪を結ってもらっている。 大きな声の挨拶。 こちらまで活力がもらえるわ。 全員が集まったみたい。 
「いってらっしゃい」
  上級生を先頭に、 列をなした子どもたちが出発していく。 他の方角からも、 別の集団がやってきたわ。 きょうも、 いい朝だこと。 
  もうすぐ、 保育園の園児たちがやってくるわ。 園内で、 楽しげに駆けまわるはず。 ちょっとのぞきに来てみようかしら。 

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