【087】 川原のススキ

  川面の直射の光の輝きは、 真夏の強烈さが弱まってきた。 いつしか夏が終わり、 秋の風を感じてきた。 中川の橋を渡り、 下流沿いに足を運んでみた。 
川辺の一角では、 群生するススキの穂が風に揺れている。 

  都会のススキにはなぜ華やかさがない。 数十本が穂先を合わせてゆれても、 応援団のような賑やかさすらない。 なぜだろうか。 太陽の下にありながらも、 川原のススキは輝きすらもたない。
 

  秋の声をひとたび聞くと、 中秋、 晩秋と、 季節の変わり目がことのほか早くなる。 ススキほど晩秋に似合うものはない。 なんて淋しい情感に色よく染まるのか。
 

  人生も燃え盛る二十歳代、 三十歳代を過ぎると、 いつしか秋の風が吹く。 気づけば四十代が過ぎ、 五十代の声を聞くようになる。 
  この間に、 自分はいつ花を咲かせたのだろうか、 と思い返す。 他方で、 六十歳からの晩年を想うとなおさら寒々と侘びしい。 木枯らしに揺れるススキと重なり合ってくる。 
 

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